蜈蝉サ∽コ輔@縺ゥ縺ソ縺ョ句

September 1192004

 海苔巻を添へし見舞の山の柿

                           児仁井しどみ

句集より。作者は三年前に癌で亡くなっている。季語は「柿」で秋。「海苔巻『に』」ではなく「海苔巻『を』」であることに注目した。つまり、見舞の品のメインは「山の柿」であって「海苔巻」ではないのである。長期病床にある作者に、贈り手は新鮮な外気の感じられる山の幸を届けてきた。たぶん、枝葉のついたままの柿だろう。食べてもらうためというよりは、見て楽しんでもらうためだ。しかしこれからが嬉しいところで、贈り手は何の手もかけていない柿だけではぶっきらぼうに過ぎると考え、せめてもと手作りの海苔巻をいくらか添えたのだった。このときに柿は贈り手の病者に対するいたわりの表現であり、海苔巻は「これでも食べて元気を出せ」という励ましの表現とも言える。作者にはその暖かい心遣いがよくわかったので、「に」ではなく「を」と、嬉しくも素直に表現したのである。またぞろ昔話で恐縮だが、昔の見舞の品や贈答品には、しばしばこうした配慮がなされていたことを思い出す。単なる貰い物のお裾分けにしても、何か自分が手をかけたものを添えたりしたものだ。添えるものが何もないときには、口上などの言葉を添えた。なかには釣れすぎた魚を黙って突き出すように置いていく人もいたけれど、あれはあれで、その照れたような表情が立派な口上になっていたのだと思う。このぎすぎすした世の中に、まだそんな奥床しさが残っていたとは。句を読んで、しんみりと嬉しくなってしまった。『十一番川』(2004・私家版)所収。(清水哲男)




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