昨夕スーパーで食品を買った。消費期限「11.24午前3:26」。なんだい、この細かさは。




2004ソスN11ソスソス24ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

November 24112004

 寝酒おき襖をかたくしめて去る

                           篠田悌二郎

語は「寝酒」で冬。元来は寒くて眠れない夜に、酒で身体を暖め、酔いの力を借りて眠ったことから冬の季語とした。が、いまでは季節を問わず、習慣としての寝酒が必要な人も多いだろう。冬の夜、いつものように妻が寝酒を用意してくれ、いつものように書斎(でしょうね)に置いていった。で、「襖をかたくしめて去る」というのだが、ここが実はいつもとは違うのである。好人物の読者であれば、隙間風が入らないようにいつもの夜よりも「かたく」しめたと受け取るかもしれない。でも、妻の行為として「去る」の措辞ははいかにも不自然だ。二人の間に何があったかは知らないけれど、句は一種の神経戦の様相を描いたようにうかがえる。いつもの妻のつとめとして、寝酒だけは用意する。しかし、それはあくまでも義務を果たすというだけのことで、言葉ひとつかけるわけでもなく、完全によそよそしい態度なのだ。よそよそしくも念入りに、無言のまま襖を「かたく」しめるという意地の悪さ(としか思えない)。それでなくとも寒い夜が、作者には心底冷え冷えと感じられたことだろう。たとえ神経戦の中味は、作者の非が原因であろうとも、こうした陰湿なふるまいに、たいていの男はまいってしまう。むろん私にも同種の覚えがあることなので、こう読んでしまったわけだ。たぶん、正解だと思いますよ。『新歳時記・冬』(1989・河出文庫)所載。(清水哲男)


November 23112004

 黄落や寮歌でおくる葬あり

                           大森 藍

語は「黄落(こうらく)」で秋。銀杏などの葉が黄ばんで落ちること。東京辺りではこれからだが、もうはじまっている地方もあるだろう。黄落がはじまると、いよいよ寒くなってくる。作者は葬儀に列席したのか、あるいは偶然に見かけたのだろうか。いずれにしても、ありそうでいて、なかなかな無い「葬」(「とむらい」と読むのかしらん)風景ではある。故人は、おそらくかつての旧制高校で青春期をおくった人なのだ。当時の寮の仲間数人が参列していて、出棺のときに誰かひとりが歌いだすと、あとの何人かも唱和して歌いだした。若い作者にははじめて聞く歌なのだが、歌う高齢の男たちの様子から彼らの遠い青春時代が思われて、心がしいんとなった。帰らざる青春……。そんな言葉も、胸をよぎる。折りから、黄色くなった木々の葉もほろほろと柩に降りかかっている。人は必ず死ぬ。そんな思いをあらためて確認するのは、こういうときだろう。寮歌といえば、私は学友であり詩友であった佃学から叩き込まれた。彼が若くして死んだときに、私は声にこそ出せなかったけれど、通夜の席の胸の内で歌ったことを思い出す。彼が愛していた五高寮歌だ。「武夫原頭(ぶふげんとう)に草萌えて/花の香(か)甘く夢に入り/竜田の山に秋逝いて/雁が音遠き月影に/高く聳ゆる三寮の歴史やうつる十余年」と、この世界は詩人・佃学の初期の抒情詩にとてもよく似ている。『遠くに馬』(2004)所収。(清水哲男)


November 22112004

 兵庫県丹南町字牡丹鍋

                           平石和美

語は「牡丹鍋(ぼたんなべ)」で冬。猪肉(ししにく)の料理、「猪鍋(ししなべ)」とも。関西で好まれ、肉を野菜と一緒に煮込み、味噌で味付けする。篠山、丹波などに多い。この句が作られたとき(1997)の「丹南町」は多岐郡に属していたが、五年前に篠山町などと合併して、現在は篠山市に属している。句は単に地名を並べたようでもあり、でもまさか「牡丹鍋」という地名はないだろうと思ったけれど、「牡丹」くらいはありそうだと調べてみて、どうやら牡丹以下はフィクションだとわかって、はじめて笑うことになった。つまり「字(あざ)」如何には勝手に当地の名物をくっつけちゃったわけだ。地名にしてよいくらいに、丹南町の牡丹鍋はポピュラーなのだろう。牡丹鍋をいただきながら、ふっとこの洒落を思いつき、心中にんまりしている作者が想像できて楽しい句だ。たまには、こういう遊びもよいだろうと、私もひねってみようとしたが、なかなかうまくいかない。以前住んでいた東京中野にちなんで、「東京都中野区丸井青井町」はどうだろうか。中野駅前には丸井本店があり、経営者は青井さんだ。現在の居住地だと、「東京都三鷹市キウイワイン地区」あたりになるのかな。三鷹市の名物はキウイであり、ワインも作られている。が、やっぱり牡丹鍋には負けるなあ。読者諸兄姉も挑戦してみませんか。『桜炭』(2004)所収。(清水哲男)




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