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2004ソスN12ソスソス22ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

December 22122004

 風邪引いて卵割る角探しをり

                           田中哲也

語は「風邪」で冬。どういうわけか、毎年この時期になると風邪を引く。昨年も引いたし、一昨年も引いた。そして、また今年も。寝込むほどではないのだけれど、それでなくとも気ぜわしい折りの風邪は鬱陶しい。句の作者は思いついて、風邪引きの身になにか暖かいもの、たとえば卵酒のようなものを作ろうとしているのだろう。ふだんから台所仕事をしていればこんなことは起きないが、たまに厨房に立つと、意外なところで戸惑ってしまうものだ。卵なんぞはそこらへんの適当な「角」で割ればよさそうなものだが、それがそうでもないのである。割りようによっては失敗することもあるし、打ち付けた調度の角を傷つけてしまうかもしれない。要するに卵を割るときの力の入れ具合(コツ)がわからないから、こういうことが起きるわけだ。鼻水をすすりながら、束の間あちこちに目をうろうろさせている作者の姿は滑稽でもあるが、私のように平生から台所に無縁のものからすると、大いに同情を覚える。ぼおっとした頭で「角」を探すのと同じ行為は、誰にでもその他の生活シーンではあることだと思う。ならば台所慣れしている人が何の角で割っているかというと、ほとんどが無意識のうちに割っているので、あらためて聞かれてもわかるまい。でも、台所に立てばきちんと割れる。頭で考えてから割るのではなく、身体が自然にそうしているのだ。『碍子』(2002)所収。(清水哲男)


December 21122004

 山国にがらんと住みて年用意

                           廣瀬直人

語は「年用意」で冬。新年を迎えるための諸支度。ミソは「がらんと住みて」だ。家の中が「がらんと」しているなどと使う「がらんと」であるが、それを「山国」全体に適用したところがユニークである。いかにも茫洋とした山国の空間を言った上で、なおゆったりとした時間の流れをも暗示している。平常はそんな時空間に暮らしている我が身でも、この時期になると、それなりの「年用意」でけっこう忙しい。大掃除や障子貼り、外回りの繕いや松飾りの手配などがあり、さらには正月用の買い物もある。平素は「がらんと住みて」いるがゆえに、それだけ余計にせわしなく感じられるということだろう。年中行事のあれこれについては、都会よりも田舎のほうが気を使う。都会では何の支度もせずに新年を迎えても、誰も何とも言いはしないけれど、田舎ではなかなかそうはいかない。あからさまに指摘はされずとも、村落共同体の目が、いつも厳しく光っているからだ。少なくとも表面的には、世間並みにつきあっていく必要がある。抜け駆けも許されないが、故意のドロップアウトも許されない。昔から、みんなで足並みを整えていくというのが、村落共同体の生き残る知恵であり、暮らしの条件なのであった。現代に至っても、その基調にはなお根強いものがあると思う。田舎の友人と話したりするとき、そのことをよく感じる。『矢竹』(2003)所収。(清水哲男)


December 20122004

 集乳缶深雪を運び来て冷めず

                           中川忠治

人協会会員を対象にした「第11回俳句大賞」で、最高点を得た句。選考委員のなかで、この句を最も推したと思われる鈴木貞雄の選評は次のようだ。「山の牧場であろう。決まった時間に搾乳室で牛の乳を搾り、大きな集乳缶に入れて運んでくる。深雪をきしませ、白い息を吐きながら運んでくるのだ。しかし、集乳缶の中の乳は、搾った時のままの温さを保っている。深雪の中に生きる乳牛の命の温みが、伝わってくるようである」。解釈としては、この通りだろう。が、この句のいちばんのチャーム・ポイントを言うとすれば、もう少し付け加える必要がある。それは、句に二つの主体が出てくる点だ。すなわち「集乳缶」を運んでくる主体と「冷めず」と断定している主体とは、明らかに違う。前者の主体は牧場の人であり、後者のそれは作者である。もとよりこうした主体入れ替えの手法はさして珍しくはないけれど、一句のどのあたりで入れ替えるかがポイントだ。作者の、いわばセンスの見せどころとなる。掲句では、それが最後の三文字「冷めず」で適用されており、その唐突さによって読者への衝撃力が高まった。つまり内容的にはあくまでも暖かい句なのだが、手法的にはクールそのものである。この段差が、句を引き締めている。俳人協会機関紙「俳句文学館」(第404号・2004年12月5日付)所載。(清水哲男)




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