昨夕、MacOSX v10.4"Tiger"が発売された。いつも必ずついてきたが、今回は様子見。




2005ソスN4ソスソス30ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

April 3042005

 妹の嫁ぎて四月永かりき

                           中村草田男

年度ということもあって、「四月」という月は活気もあるがあわただしくもある。一般的な認識として、四月は短いと感じるのが普通だろう。だがこれに個人的な事情が加わると、いつもの四月とは違って、掲句のように永く感じる人も出てくる。妹が嫁いだ。いつも側にいた人がいなくなった。めでたいことではあるけれど、予想していた以上の喪失感を覚えて、作者は少しく滅入ってしまったのだ。それに昔のことだから、これからはそう簡単に妹と会うことはできない。何かにつけて、ふっと妹を思い出し、淡い寂しさを感じる日々がつづいた。この句には、兄という立場ならではの寂寥感がある。というのも、妹の結婚準備の段階からして、両親ほどにはしてやることもない。手をこまねいているうちに、自分以外の者の手でどんどん段取りは進められ、ろくに妹と話す機会もないうちに挙式となり、気がつけば傍らから消えてしまった。そういう立場なので仕方がないとはいえ、妹の結婚に実質的には何も関与していない自分であるがゆえに、どこか取り残されたような気持ちにもなっている。永い四月だったなあと嘆息するのも、よくわかるような気がする。さて、今年の四月も今日でおしまいですね。読者諸兄姉にとっては、どうだったでしょうか。私には例年通り、やはり短く感じられた四月でありました。『新歳時記・春』(1989・河出文庫)所載。(清水哲男)


April 2942005

 千代田区の柳は無聊みどりの日

                           大畠新草

語は「みどりの日」。東京都千代田区は、お隣りの中央区と並んで定住者が少ない。夜間の人口は激減する。「昭和35年の12万人(住民基本台帳人口)をピークに区の人口は減り続け、平成11年1月には3万9千567人となっています。人口の減少により、地域のコミュニティが衰退し、生活関連の商店が減少するなど、区民生活に大きな影響を与えています」(千代田区ホームページ)。戦後いちはやく麹町区と神田区が合併してできた区だが、焼け野原だった当時の人口が3万人ほどだったそうだから、ほぼそのレベルに戻ってしまったわけだ。したがって、平日はビジネスマンなどでにぎわう街も、休祝日にはさながらゴーストタウンと化してしまう。私は皇居半蔵門前の放送局で働いていたので、この言い方は誇張ではない。食堂なども店を休んでしまうので、ホテルのレストランで高いランチを食べなければならなかった。掲句はそんな祝日の千代田区を詠んでいて、私などには大いに腑に落ちる。「みどりの日」というのに、せっかく青々としている「柳」も「無聊(ぶりょう)」のふうだ。みずみずしいはずの街路の柳も、なんとなくだらりと垂れ下がっているだけのような……。今日は昭和の時代には天皇誕生日だったので、千代田区千代田1-1というアドレスを持つ皇居の溢れんばかりの「みどり」も、句の背景に滲んで見える。昭和も遠くなりにけり。この句には、ちらりとそんな隠し味が仕込まれていると読んだ。『新版・俳句歳時記』(2001・雄山閣出版)所載。(清水哲男)


April 2842005

 たんぽぽに普通列車の速さかな

                           奥坂まや

語は「たんぽぽ(蒲公英)」で春。福知山線での大事故の後だけに、余計に沁みいってくる句だ。二通りに解釈できると思う。作者が電車に乗っている場合と、通過する電車を眺めている場合と。乗っているのであれば、いわゆる「鈍行」ゆえの気楽さと楽しさが読み取れる。ローカル線であれば、なおさらだ。見るともなく窓外を見やっていると、線路沿いに点々と黄色い花が咲いているのに気がついた。「ああ、たんぽぽだ。春だなあ」。そう感じただけで、心が温かくなってくる。乗っていない場合には、たんぽぽを近景にして、遠くをゆっくりと行く電車を眺めている。いかにも牧歌的というのか田園的というのか、ちょっと谷内六郎の世界に通じていくような眺めだ。私は後者と取りたいけれど、読者諸兄姉は如何。いずれにしても、たんぽぽに猛スピードは似合わない。一面に咲き乱れている菜の花あたりだと、新幹線のスピードでも似合いそうな気もするが、たんぽぽは黄色いといっても小さくて地味な花なので、あまりのスピードだと視界から省略されかねないからだ。したがって、句の手柄は「速さかな」の止めにあるだろう。「速さ」という言葉は抽象的でありながら、しかし句では逆に具体として読者に印象づけられるのである。なかなかの技巧の冴え。実作する方なら、おわかりになるだろう。『縄文』(2005)所収。(清水哲男)




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