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May 2952005

 夜の岩の一角照るは鯵釣れり

                           秋光泉児

語は「鯵(あじ)」で夏。種類が多いので、総称である。ちなみに代表格であるマアジの学名は"Trachurus japonicus"と、日本の名が入っている。普段は深い海に住んでいるが、この季節になると、産卵のため浅いところにやってくるのだという。夕食後の散歩だろうか。暗い海岸から見やると、遠くの岩場にちろちろと灯りが見える。ああ、あれは鯵を釣っているんだな。と、それだけの句だけれど、初夏の風物詩としての味わいは良く出ている。私は海で釣ったことはないので知らないのだが、この灯りについては釣り好きだった詩人の川崎洋が書いている。「横須賀の岸壁から竿を出し、夕刻から夜にかけてよくアジを釣りました。群れを寄せるのに、横にカーバイトの明かりを用意しました。それ専門の用具を釣り道具店で売っていました。子どものころ、東京の大森で縁日のとき道の両側にならんだ露店の灯火がこのカーバイトで、その明かりと匂いを懐かしく思い出しながら釣りました」(『肴の名前』2004)。現在もカーバイトを使うのかどうかは知らないが、なるほど、釣り人にはこうした用具も楽しみの一つであるわけだ。お祭りなのですね、釣りは……。鯵といえば、夏の民宿での朝ご飯を思い出す。我が人生のそれこそお祭りどきだったなあ、あの頃は。『新歳時記・夏』(1989・河出文庫)所載。(清水哲男)




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