団塊世代退職金だれのもの? 男性の7割「自分と妻」/女性の半数以上「自分」のもの。




2006ソスN4ソスソス11ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

April 1142006

 沖かけてものものしきぞかじめ舟

                           石塚友二

語は「かじめ(搗布)」で春。海藻の一種だが、ご存知だろうか。辞書ふうに説明すると「暖地の近海に産する大型の藻類で、直径1.5センチ〜3センチぐらいの円柱茎の上端に、細長い葉が群がっている」となる。よく似ているが「荒布(あらめ)」とは別種だ。山口県の田舎に暮らした子供のころ、海から遠い山村というのに、どういうわけか大量の干した搗布をよく見かけた。何度も触った記憶もある。昆布よりも黒みの薄い褐色で、お世辞にも見かけはよろしくない。食べられるそうだが、食べた記憶はないので、鶏や家畜の餌にでもしていたのだろうか。思い出そうとするのだが、どうしても思い出せない。そんな程度の記憶しかないのだから、もとより句のような情景は見たことがないのだけれど、作者が「ものものしきぞ」と詠んだ気持ちはわかるような気がする。素人目には、そんなに「ものものしい」感じで採りにいくものでもあるまいにと、搗布を知っている人ならそう思うのが普通だろうからだ。でも一方で作者はこの情景に接して、搗布の価値を見直してもいる。「ほお」と、心のどこかで身を乗り出している。こういうことは誰の心にもたまに起きることで、そのあたりの機微を巧く詠んだ句ということになるのだろう。それにしても、我が故郷での搗布は何に使われていたのか。思い出せないとなると、余計に気になる。『合本・俳句歳時記』(1974・角川文庫)所載。(清水哲男)


April 1042006

 こでまりや白衣の叔母の征きし日ぞ

                           泉夕起子

語は「こでまり(の花)」で春。「征(ゆ)きし日」の「征」は「出征」の「征」で、すなわち戦地に赴く意だ。戦争といえば「男」のイメージが強くて、つい忘れられがちになるが、多くの女性もまた看護婦として従軍してきた。かつての大戦では、日本赤十字社から29,562人の戦時救護看護婦が派遣され、うち戦死者1,143人、負傷者4,689人とされている。しかもこの他に、陸海軍に応召された人々、日中戦争時の派遣人数等をいれると相当な数にのぼり、ある資料によると、およそ5,6000人近くが軍務についたといわれている。なかでも日本赤十字社の看護婦は、養成学校を終えると二十年間は戦地召集への義務を負っていたので、男と同じように赤紙一枚の召集令状で有無を言わせず戦地へと駆り出された。掲句はその出征シーンの回想であるが、男の出征とは違い、日の丸や万歳で見送られることはなかったのだろう。家族など少数の人がひっそりと、真っ白いこでまりの花の咲く道に出て、白衣の叔母にしばしの別れを告げたのだ。叔母といっても、おそらくは二十歳になったかならないかの若い女性である。可憐なこでまりにも似たその姿が、作者の脳裏にいつまでも焼き付いて離れなかったに違いない。この季節になると、自然に思い出されてしまうのである。明治期の日本の歌に世界でも珍しいといわれる「婦人従軍歌」があり、その一節にこうある。「真白に細き手をのべて 流るる血しお洗い去り まくや繃帯白妙の 衣の袖はあけにそみ」。『航標・季語別俳句集』(2005)所載。(清水哲男)


April 0942006

 駝鳥来て春の団子をひとつ食う

                           辻貨物船

ポキ
らしい楽しい句はないかと探していたら、灯台下暗し、辻征夫の句集に掲句が載っていた。この「駝鳥(だちょう)」、なんとなく宮崎駿の描いた三鷹市のキャラクター「ポキ」(図版参照)を連想させてくれる。ただし、「ポキ」よりも辻の「駝鳥」句のほうが先だ。また「ポキ」が駝鳥なのかどうかは、似ているけれどわからない。そんなことはともかく、春の午後あたりだろうか、どこからか駝鳥がのこのことやってきて、何故かそこに置いてあった「団子」をひとつだけぱくっと食べたよ、というのである。食べた後で、大きな目玉をくるくるっとまわしてから、またもと来た方向に戻っていったような気がする。こういう可愛らしくも茫洋とした情景を描くには、普段からこうした世界で遊びなれていないと、いきなり付け焼き刃での作句は難しいだろう。詩人・辻征夫の内面には、たしかにこういう茶目っ気に近い世界があった。この駝鳥は、だからほとんど「ポキ」と同じような想像上の鳥なのであって、いちおう「駝鳥」とは書いてあるけれど、詩人の頭のなかでは、実物をかなりデフォルメした姿で動いていたにちがいない。このような、いわば童心の発露みたいな瑞々しい句の作り手が、現代のどこかにいないものだろうか。『貨物船句集』(2001)所収。(清水哲男)




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