早大と京大が共同開発したビール「ホワイトナイル」が生協などで発売に。大学も変った。




2006ソスN4ソスソス12ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

April 1242006

 とろけるまで鶏煮つつ八重ざくらかな

                           草間時彦

語は「八重ざくら(八重桜)」で春。サトザクラの八重咲き品種の総称。桜のうちでは咲くのが最も遅く、満開になると枝が見えないほど重く垂れ下がって咲く。この句は、櫂未知子『食の一句』(2005・ふらんす堂)で知った。一年間、毎日「食」にちなんだ句を紹介解説した本で、なかなかに楽しい。「こういう句を読むと、毎日ばたばたして暮らしている自分の情けなさを痛感する」と書いてあって、同感だ。ゆっくりと時間をかけて「鶏(とり)」を煮込む。誰にでもできそうだが、そういうわけにはいかない。料理ばかりではなく、諸事に時間をかけるには日ごろの生活ペースによるのもさることながら、その上に一種の才能が必要だと、私などには思われる。「のろのろ」に才能は不要だが、「ゆっくり」「ゆったり」には、持って生まれた資質が相当に影響するようだ。同じことをほとんど同じ時間でこなしたとしても、「せかせか」と見える人もいれば、逆の人もいる。時間の使い方が上手く見える人は、たいていが後者のタイプである。それはともかく、とろとろとろとろと鶏肉を煮ていると、とろとろとろとろと甘い匂いが漂ってきて、窓外の「八重ざくら」もまたとろとろとろとろと作者を春の底に誘うがごとくである。少年時代に囲炉裏の火で、とろとろとろとろとジャガイモと鯨肉を煮ていたことを思い出した。物事にゆったりする才能はなかったけれど、ヒマだけはあったからである。(清水哲男)


April 1142006

 沖かけてものものしきぞかじめ舟

                           石塚友二

語は「かじめ(搗布)」で春。海藻の一種だが、ご存知だろうか。辞書ふうに説明すると「暖地の近海に産する大型の藻類で、直径1.5センチ〜3センチぐらいの円柱茎の上端に、細長い葉が群がっている」となる。よく似ているが「荒布(あらめ)」とは別種だ。山口県の田舎に暮らした子供のころ、海から遠い山村というのに、どういうわけか大量の干した搗布をよく見かけた。何度も触った記憶もある。昆布よりも黒みの薄い褐色で、お世辞にも見かけはよろしくない。食べられるそうだが、食べた記憶はないので、鶏や家畜の餌にでもしていたのだろうか。思い出そうとするのだが、どうしても思い出せない。そんな程度の記憶しかないのだから、もとより句のような情景は見たことがないのだけれど、作者が「ものものしきぞ」と詠んだ気持ちはわかるような気がする。素人目には、そんなに「ものものしい」感じで採りにいくものでもあるまいにと、搗布を知っている人ならそう思うのが普通だろうからだ。でも一方で作者はこの情景に接して、搗布の価値を見直してもいる。「ほお」と、心のどこかで身を乗り出している。こういうことは誰の心にもたまに起きることで、そのあたりの機微を巧く詠んだ句ということになるのだろう。それにしても、我が故郷での搗布は何に使われていたのか。思い出せないとなると、余計に気になる。『合本・俳句歳時記』(1974・角川文庫)所載。(清水哲男)


April 1042006

 こでまりや白衣の叔母の征きし日ぞ

                           泉夕起子

語は「こでまり(の花)」で春。「征(ゆ)きし日」の「征」は「出征」の「征」で、すなわち戦地に赴く意だ。戦争といえば「男」のイメージが強くて、つい忘れられがちになるが、多くの女性もまた看護婦として従軍してきた。かつての大戦では、日本赤十字社から29,562人の戦時救護看護婦が派遣され、うち戦死者1,143人、負傷者4,689人とされている。しかもこの他に、陸海軍に応召された人々、日中戦争時の派遣人数等をいれると相当な数にのぼり、ある資料によると、およそ5,6000人近くが軍務についたといわれている。なかでも日本赤十字社の看護婦は、養成学校を終えると二十年間は戦地召集への義務を負っていたので、男と同じように赤紙一枚の召集令状で有無を言わせず戦地へと駆り出された。掲句はその出征シーンの回想であるが、男の出征とは違い、日の丸や万歳で見送られることはなかったのだろう。家族など少数の人がひっそりと、真っ白いこでまりの花の咲く道に出て、白衣の叔母にしばしの別れを告げたのだ。叔母といっても、おそらくは二十歳になったかならないかの若い女性である。可憐なこでまりにも似たその姿が、作者の脳裏にいつまでも焼き付いて離れなかったに違いない。この季節になると、自然に思い出されてしまうのである。明治期の日本の歌に世界でも珍しいといわれる「婦人従軍歌」があり、その一節にこうある。「真白に細き手をのべて 流るる血しお洗い去り まくや繃帯白妙の 衣の袖はあけにそみ」。『航標・季語別俳句集』(2005)所載。(清水哲男)




『旅』や『風』などのキーワードからも検索できます