関西の野球ファンの間では「サンテレビ」の谷口英明アナの人気が高い。聞いてみたいな。




2006ソスN4ソスソス29ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

April 2942006

 個展より個展へ銀座裏薄暑

                           鷹羽狩行

語は「薄暑(はくしょ)」で夏。初夏の候の少し暑さを感じるくらいになった気候を言うが、四月中旬ごろから「薄暑」を覚えることは多い。銀座は画廊の多い街だ。一丁目から八丁目まで、おそらく二百廊以上はあるのではなかろうか。とくに銀座裏の通りの一画には、軒並みにひしめいていると言っても過言ではない。そんなにあるのに、よく商売になるなと感心させられてしまうが、それほどに銀座は昔から、裕福な好事家や趣味人が集まる土地だったというわけだ。私のサラリーマン第一歩は芸術専門誌の編集者だったので、銀座にはよく通った。掲句のように「個展から個展へ」とネタ探しに歩き回り、若かったにもかかわらず、あまりの画廊の多さに辟易したことを覚えている。句の作者は、むろんネタ探しなどではなく、楽しんで見て回っているのだ。ひんやりとした画廊を出て、また次の画廊へと向かう。とりわけてこれからの季節は、この間の「薄暑」がとても嬉しく感じられる。おあつらえ向きに「銀座の柳」の新緑でも目に入れば、気分はますます良くなってくる。「画廊から画廊へ」と詠み出した軽快なテンポが、作者の上機嫌を見事に描き出していて心地よい。私だったら、しばらく見て回った後は、天井の高い「ライオン」の本店で生ビールといきたいところだけれど、このときの作者はどうしたのだろう。ああ、久しぶりに銀座に出かけたくなってきた。『地名別鷹羽狩行句集』(2006)所収。(清水哲男)


April 2842006

 学やめし汝が苗札のローマ字よ

                           古島壺菫女

語は「苗札(なえふだ)」で春。畑や花壇に種を蒔いたり苗を植えたときに、品種の名前を書いた小さな木の札を立てておく。最近はあまり見かけなくなったが、小学校などの花壇や農園には健在だ。どんなふうに芽生え、どんなふうに生長するのかを待ち受け、見守っているようで微笑ましい。掲句では、その苗札がローマ字で表記されている。作者は「学やめし汝(な)」の母親か姉だろうか。「学やめし」は「学」を放棄したという意味ではなく、家庭の事情で上の学校に行くことを断念したという意味だ。いつごろの句か不明だが、まだ猫も杓子も(失礼)が高校や大学に行ける時代ではなかったころの作句だろう。当人も勉強が好きで、周囲もできることなら上級学校に行かせてやりたいと思っていたのが、そうはならなかった。進学をあきらめて、家業の農業を継いでいる。それも、継いでからはじめての春だ。そんな彼の書いた苗札の文字は、みな横文字だった。でも英語や学名ではなくて、日本語表記でも構わないところを、ローマ字で書いてあったのだ。洒落っ気からではあるまい。すなわち英語などの横文字への憧れが、彼をしてローマ字で書かしめたとしか思えない。なんという「いじらしさ」。作者はしばし、苗札のローマ字をみつめ、目を潤ませていたにちがいない。「ローマ字よ」の「よ」に、作者の複雑な思いの全てがこもる。『俳諧歳時記・春』(1968・新潮文庫)所載。(清水哲男)


April 2742006

 春田より春田へ山の影つづく

                           大串 章

語は「春田(はるた)」。まだ苗を植える前の田のことで、掲句の情景では、水も豊かにきらきらとさざ波を立てている。車窓風景だろう。行けどもつづく春の田に、沿った山々が同じような影を落としている。単調ゆえの美しさ、いつまでも見飽きない。「自由詩」を書いてきた私などには、このような句に出会うと、まぎれもない「俳句」が確かにここにあるという感じを受ける。この情景を同様に詩に書くことは可能だろうが、しかし掲句と同様の美しさを描き出すことは難しいと思う。少なくとも私の力では、無理である。書いたとしても、おそらくはピンボケ写真のようになってしまい、この句のように視線が移動しているにもかかわらず、春田に写る山影を一つ一つかっちりと捉えて、読者に伝える自信はない。また、そういうことが頭にあるので、たまに作句を試みるときにも、この種の題材を敬遠してしまうということも起きてくる。どうしても、まずは自由詩の窓から風景や世間を覗く癖がついているので、そこからポエジーの成否を判断してしまうからだ。詩人の俳句がおうおうにしてある種のゆるみを内包しがちなのは、このあたりに原因があると思われる。そこへいくと掲句の作者などは、もうすっかり俳句の子なのであるからして、俳句様式が身体化していると思われるほどに、詩人がなかなか手を触れられない題材を自在に扱って、ご覧の通りだ。句柄は地味だが、ここで「俳句」は最良の力を発揮している。『大地』(2005)所収。(清水哲男)




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