NHKTV 昨日昼のトップニュースはなんと松井の骨折だった。時代が変わりNHKも変わった。




2006ソスN5ソスソス13ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

May 1352006

 藤房の中に門灯点りけり

                           深見けん二

語は「藤(の)房」で春、「藤」に分類。美しい情景だ。このお宅では,門の上方から藤の蔓を寄せて垂らしているのだろう。たそがれどきになり門灯が点(とも)ると、いまを盛りの藤の花房を透かして、それが見えるのだ。藤の花も門灯も、ぼおっと霞んだように見え、それらが晩春のおぼろな大気の醸し出す雰囲気と溶け合って,さながら一幅の絵のごとしである。下手の横好きで写真に凝っている私としては、一読、撮りたいなあと思ってしまった。ただし、露出の具合が難しそうで、まず私ではとても上手には撮れないだろう。まごまごしているうちに、日が暮れてしまうだろう。近所に藤ならぬ薔薇の門を構えているお宅があって、今年も間もなく見事な花々が開く。これを昼間の明るい光線で撮っても、絵葉書みたいな平凡な写真になりそうなので、結局一度も撮ったことはない。で、掲句を知ったときに「これだっ」と興奮したけれど、念のためにと確かめに行ってみたら、門灯のない門だった。密集して咲く薔薇の花と門灯と……。これはこれで、掲句とは違った美しさが出るはずなので、残念至極である。いずれどこかで偶然に、そんな門構えの家を見つけるしか手段はない。揚句に戻れば、この構えの家を発見したときに、作者の練達をもってすれば、もう句は八分どおり成っていたも同然と言えようから、その意味では写生俳句と写真とはよく似ているところがある。いずれも発見する眼が大切であり、しかしその眼は一日にしては成らない。『日月』(2005)所収。(清水哲男)


May 1252006

 目覚めるといつも私が居て遺憾

                           池田澄子

季句。その通りっ、異議なしっ。「私」は邪魔くさい、「私」は面倒だ。「目覚める」ことは我にかえることだからして、毎朝「我」の存在にに気づかされる「私」は、それだけでもう、かなり疲れてしまう。「私」だから満員電車に乗って会社や学校に行かなければならないのだし、「私」だからみんなのパンを焼いたりゴミを出したりしなければならないのだ。この事態は、まことにもって極めて「遺憾(いかん)」なことではないか。「遺憾」とは、「思い通りにいかず心残りなこと。残念。気の毒」[広辞苑第五版]の意だ。この言葉は政治家の無責任な常套語みたいになっているので、その感じで読めば、掲句は滑稽な感じにも読める。だが、ある長患いの人が言っていた。「朝になると、病人の自分に嫌でも気づかされるんですよ。で、がっかりするんです。眠っている間に見る夢は、元気な時代のものが多くて、とても楽しいのに」と。また、ある高齢者は「夢の中ではスタスタと歩いている自分がいるんです。でも、目が覚めるとねえ……」とつぶやいた。こうした読者にとっては、掲句はとても切実で、切なく真に迫ってくるだろう。作者の池田さんには、早起きは苦手だとうかがったことがある。なにも好きこのんで、朝っぱらから「遺憾」な思いをすることはない、ということからなのだろう(か)。『たましいの話』(2005)所収。(清水哲男)


May 1152006

 行く道も気づけばいつか帰り道

                           高野喜久雄

季句。作者は鮎川信夫、田村隆一らと同じ「荒地」の詩人で、この五月一日に七十八歳で亡くなった。訃報に接して、高野さんがホームページを持っておられたことを思い出し、行っていろいろと読んでいくうちに、掲句を含む「寒蝉10句」を見つけたのだった。決して上手な句ではないけれど、亡くなられた現実を背景にして読むと、切なさがこみあげてくる。自分では希望を抱いて前進してきたつもりの道が、「気づけばいつか帰り道」だったとは……。一般的には、高齢者によくある感慨の一種とも取れようが、よく知られた初期詩編の「独楽」に書かれているように、このような「気づき」は若い頃からの作者に特有のものだった。「独楽」全行を引いておく。「如何なる慈愛/如何なる孤独によっても/お前は立ちつくすことが出来ぬ/お前が立つのは/お前がむなしく/お前のまわりをまわっているときだ//しかし/お前がむなしく そのまわりを まわり/如何なるめまい/如何なるお前の vieを追い越したことか/そして 更に今もなお/それによって 誰が/そのありあまる無聊を耐えていることか」。そして、もう一句。この詩をもっと作者自身に引き寄せて書けば、こういうことになるのだろう。「彫りながら全てを木屑にかえす朝」。……ご冥福をお祈りします。合掌。「高野喜久雄HP・詩と音楽の出会い」所載。(清水哲男)




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