August 182006
運慶とのつぴきならぬ昼寝かな
平山雄一
鎌倉時代を代表する仏師運慶は、東大寺南大門の金剛力士像や興福寺の無著・世親菩薩立像などが代表作。運慶作の仏像を観た興奮が作者の中に残っていて、その昂ぶりを抱え込んだまま昼寝の刻を過ごしている。実際に眠ったのか、悶々としたのか、はたまた夢に運慶が現れたのか。とにかく仏像という作品を通して運慶という芸術家の魂が現代に生きる作者の魂を揺さぶったのだ。それが「のつぴきならぬ」。八百年余の時を超えて二つの魂が出会う。そして、この句に漲る青春性は、なんと言っても「昼寝」にある。明るい光の中で畳に仰臥する姿は、大らかでいて、どこか捨身無頼の生き方を思わせる。作者の中にそういうことに対する憧憬や予感があったのかもしれない。『天の扉』(2002)所収。(今井 聖)
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