January 162007
森番に革命の歌山眠る
松橋昭久
革命とは、国家や社会の組織の急激な変革をいうとある。「革命」という言葉で、血がたぎるような興奮を覚える世代はいつ頃までなのだろう。おそらく、理想に燃えて学生運動に深く関わった世代だろうか。革命に関わり、勝利を手にしたものが幸福を得るとは限らない。掲句では「森番」という、現役や世俗から遠く離れた厭世的な姿が、すべてを象徴している。森番の過去に何があったというのだろう。しかし、彼には繰り返し口にする歌がある、それだけで充分なのだと思い直す。森番は満天の星を背負い、暗く大きな口を開けているような冬の山へ向かって、子守唄を聞かせるようにいつまでも低く歌うのだろう。「山眠る」とは、中国『臥遊録(がゆうろく)』の「冬山惨淡(さんたん)として眠るが如し」を出典に持つ、山の静かに深く眠るような姿を擬人化させた季語だが、ここではじっと無言で森番の歌に聞き入る同志のようなたたずまいがある。たったひとつきり繰り返す革命の歌を思うとき、彼の過去がほんの少しだけ顔を出す。『雪嶺』(2006)所収。(土肥あき子)
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