May 172007
鮎焼くや空気の軽き村にゐて
橋場千舟
もうすぐ解禁になる鮎釣りを心待ちにされている方も多いだろう。「空気の軽き村」という表現に身の装いも軽く田舎に遊ぶ愉快な気分と、すがすがしい空気との調和が感じられる。真青な空と山。風通しのよい林から鳥の囀りも聞こえてくるかもしれない。「ゐて」とあるから作者は村に住んでいるのではなく、都会の喧騒から離れたこの場所へ家族や友人と連れ立って遊びに来ているのだろう。澄み切った空気を胸いっぱいに吸い込んで、初夏の休日を楽しむ。川原の石を積んで即席の石窯を作り、釣りたての鮎を串にさして焼くのもいい。家や人が密集する街で忙しい日々を送っていると、ゆったりと自然に心を遊ばすのを忘れがちになる。こんな村で深呼吸すれば肺のすみずみまできれいになりそうだ。同じ川の鮎でも上流域でとれる鮎ほど身のしまりがよく味もいいと聞く。空気の軽い村で川音とともに食する鮎はさぞおいしいことだろう。生きのいい鮎なら塩を振ってこんがり焼けば、スマートな身からするりと骨が抜ける。行楽の楽しさが伝わってくるとともにああ、とれたての鮎が食べたいと、食欲をそそられる一句でもある。『水玉模様』(2000)所収。(三宅やよい)
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