給料日。二十代での河出書房は隔週給料制、当時の文藝春秋は毎週給料が出ていた。(哲




2007ソスN5ソスソス25ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

May 2552007

 初夏のわれに飽かなき人あはれ

                           永田耕衣

の句、「飽く」を現代語的に解釈すると、飽きるの意味だから、われに飽きていない人が「あはれ」だという内容。こんな自分にも飽きないで付き合ってくれているねという、例えば糟糠の妻への愛情をひとつひねった表現かと思った。最初は。しかし、だとするとどうして「飽かざる」にしないのかと不思議に思ったのだった。自分なら「われに飽かざる人あはれ」にするのにと。耕衣は俳句の技法においては、どんなカードでも切れる人だ。系譜的には誓子門の「天狼」系というふうに知られているが、「寒雷」創刊号の巻頭二席もこの人だ。なんでも自在に出してこられる俳人が「飽かざる」にしない違和感が残った。納得が行かないので調べてみると、古語の「飽く」には肯定的に用いて「満足する」という意味がある。その意味で取ると「われに満足しない人があわれだ」という、前述とは逆の内容になる。こちらだと自分の気持ちを直截に相手にぶつけている句だ。こちらの方が作者の本意だろう。耕衣の仕掛けはまだある。「あはれ」には今の語意の「哀れ」の他に「しみじみと趣き深い」という意味もある。こうなると意味の組み合わせはますます何通りにも拡散していくようにも思える。「初夏」の働きは季節感よりも枕詞のように「われ」につながるだけだ。「おい、わかるかい、この句」と耕衣が言っている。講談社『新日本大歳時記』(2000)所載。(今井 聖)


May 2452007

 メロンほど淡き翳もち夏の山羊

                           冬野 虹

羊は数千年も前から中近東で飼育されていたらしい。痩せた土地でも育てられる頑強さに加え、肉や乳がおいしいことが家畜として長く飼われるようになった理由なのだろう。日本でも昭和30年代初期には60万頭もの山羊が飼育されていたそうだから、農村に山羊がいる風景は別段珍しくなかったかもしれない。けれども身近に山羊を知らないものにとって、この動物はちょっと不気味で不思議な存在だ。例えば山羊の瞳は縦ではなく細い三日月を横に寝かせたような形をしている。広く水平に見渡せるよう横一文字のかたちになっているそうだけど、あの目に映る風景はどんなだろう?円盤のように平べったく横に広がっているのだろうか。掲句ではその山羊の翳に焦点があてられている。つややかな若葉を透かした木漏れ日が、ちらちら地面に躍る夏の午後。新緑は真っ白な山羊の身体にも淡いメロン色の光を落としているのだろう。薄緑の光が差す状態を山羊そのものの翳と表現したことで、初夏の明るい空気の中にいる山羊をパステル画のように淡くきれいに描き出している。画家でもある作者にとっては絵画での表現と言葉での表現は別個のものだったろうが、色や形を捉える鋭敏な感性が俳句の表現にも生かされているように思う。『雪予報』(1988)所収。(三宅やよい)


May 2352007

 雨のふる日はあはれなり良寛坊

                           良 寛

季。良寛が住んだ越後は雨の多い土地である。梅雨時か秋の長雨か、季節はいずれであるにせよ、三日以上も雨がつづくことは珍しくない。托鉢に歩き、その途次に子どもたちと手毬をついたり、かくれんぼをしたりしてよく遊んだと伝えられる良寛にとって、雨の日はつらい。里におりて子どもたちと「ひふみよいむな 汝(な)がつけば 吾(あ)は歌ひ あがつけば汝は歌ひ つきて歌ひて・・・・」と手毬に興じた良寛にとって、恨みの雨であるかもしれない。しかし、良寛に恨みの心は皆無である。それどころか、自らを「良寛坊」などと自嘲的に対象化し、「あはれ」とも客観視して見せている。良寛持ち前のおおらかさや屈託のなさは感じられても、「哀れ」や「せつなさ」が耗も感じられないところは、さすがである。いささかも哀切ではなく、湿ってもいない。雨の日は庵にいて歌を詠み、のんびり書を読み、筆をとって楽しむことが多かった。訪れる人もなく、好きな酒を独りチビチビやっていたかもしれない。「良寛坊」を、読者が自分(あるいは誰か)と入れ替えて読むのも一興。良寛の漢詩、和歌、長歌などはよく知られているが、俳句は「焚くほどは風が持てくる落葉かな」が知られているくらいで、いわゆる名句はあまりないと言っていい。父以南は俳人だった。良寛の句は手もとにある全集に八十五句収められ、編者・大島花束は「抒情詩人としての彼の性格は、俳句の方ではその長足を伸ばすことが出来なかったらしい」と記している。『良寛全集』(1989)所収。(八木忠栄)




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