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June 1162007

 螢火に男の唇の照らさるる

                           折井眞琴

の「男」が作者とどういう関係にあるのかは、わからない。でも、そのほうが良い。見知らぬ男というわけにはいくまいが、恋人や愛人のたぐいでもないだろう。作者に掌のなかでか、虫かごのなかでか、明滅している蛍を気軽に見せてくれるほどの近しさの男である。親族や兄弟かもしれないし、単なる隣近所の知りあいかもしれない。男が見せようと近づけてきたのは「螢火」であるのだが、のぞき込もうとした作者は、蛍の光よりも、それに照らされた男の「唇」に目がいってしまった。すなわち、それまでには感じたことのなかった人に、一瞬生の「男」を感じたのである。それがどうしたということでもないのだけれど、このように相手が突然突出して異性化する瞬間は、男女を問わず、誰にも思い当たるフシはあると思う。その瞬きする間ほどのエロスを、作者はよく形象化し得ている。同工の句に「弟の指美しき梅雨の家」もあって、作者の腕前もさることながら、このような内容をさらりと表現せしめる俳句という様式には、感じ入らないわけにはいかない。『孔雀の庭』(2007)所収。(清水哲男)




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