菴丞ョ鬘穂ソ。縺ョ句

July 1972007

 淋しい指から爪がのびてきた

                           住宅顕信

頭火や尾崎放哉の自由律俳句は、彼らの特異な生き方を加味して読まれるケースが多いようだ。季語の喚起力や定型を捨てた代わりに作者の人生を言葉の裏づけにしているとも言える。掲句の住宅顕信(すみたくけんしん)もまた、若くして不治の病に侵され26歳の若さで他界した。「ずぶぬれて犬ころ」「降りはじめた雨が夜の心音」などの句がある。この欄に載せようと、掲句を選んだあと、「淋しいからだから爪がのび出す」という放哉の句と似ているのに気づき、その類似について考えていた。放哉に私淑していた顕信がそれを知らないはずはない。が、顕信には顕信の現実があった。その現実を境涯と言い換えてもいいと思うが、そこから考えると類想で片付けられないものも見えてくる。掲句の「指から爪がのびてきた」には手を頭の上にかざしてじっと見入っている病臥の長い時間が感じられる。放哉もまた病魔に冒されていたが、「からだから爪がのび出す」という突き放した表現に荒々しさも感じられる。処し様のないこの激しさが放哉を小豆島の孤独な生活へ追い込んでいったのかもしれない。境涯から読むことは、似ている両句の違いを理解する一助にはなるだろう。しかし彼らの境涯を知らずにそれぞれの句を読んで心を動かされる読者もいるだろう。それは両句とも爪がのびる何気ない生理現象に焦点をあてることで、人間が共通して持っている「淋しさ」への道をひらいているからこそ人を魅了するのかもしれない。『住宅顕信 全俳句集全実像』(2003)所収。(三宅やよい)




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