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February 0922008

 黒といふ色の明るき雪間土

                           高嶋遊々子

京に今週三度目の雪の予報が出ている。しかしまあ、降ったとしても一日限り、翌日は朝からよく晴れて、日蔭にうっすら青みを帯びた雪が所在なげに残っているものの、ほとんどがすぐ消えてゆくだろう。雪間とは、長い冬を共に過ごした一面の雪が解けだして、ところどころにできる隙間のことをいい、雪の隙(ひま)ともいう。雪間土とは、そこに久しぶりに見られる黒々とした土である。雪を掻いた時に現れる土は凍てており、まだ眠った色をしているのだろう。それが、早春の光を反射する雪の眩しさを割ってのぞく土の黒は、眠りから覚め、濡れて息づく大地の明るさを放っている。よく見ると、そこには雪間草の緑もちらほらとあり、さらに春を実感するのだろう。残念ながら、私にはそれほどの雪の中で冬を過ごして春を迎えた経験はないが、黒といふ色、という、ややもってまわった表現が、明るき、から、土につながった瞬間に、まるで雪が解けるかのような実感を伴った風景を見せてくれるのだった。「ホトトギス新歳時記」(1986・三省堂)所載。(今井肖子)




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