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February 1222008

 翼なき鳥にも似たる椿かな

                           マブソン青眼

句の「翼なき鳥」という痛ましい姿に、デュマ・フィスの椿姫を重ねる読者は私だけではないだろう。『椿姫』は、社交界で「椿姫」とうたわれた美しい娼婦マルグリットと青年アルマンの悲恋の物語であるが、その名のゆえんは、ドレスの胸元に月の25日は白い椿、あと5日間を赤い椿を付けていたということからだった。この艶やかな描写に今でもはっと息をのむ。日本から西洋に渡った椿は、寒い季節でもつややかな葉や花を鑑賞することができることから「東洋のバラ」と呼ばれ、社交界ではこぞって椿の切り花を手にしていたといわれる。情熱の花として愛されているヨーロッパの椿に引きかえ、日本では美しくもあるが花ごと落ちることで不吉な側面も持っており、掲句が持つ印象は更に陰翳を濃くする。椿の樹下はまるで寿命の尽きた鳥たちの墓場でもあるように。〈鯉幟おろして雲の重みかな〉〈ああ地球から見た空は青かった〉『渡り鳥日記』(2008)所収。(土肥あき子)


April 2442008

 パスポートにパリーの匂ひ春逝けり

                           マブソン青眼

しい海外旅行の経験しかないけど、パスポートを失くす恐ろしさは実感させられた。これがないと飛行機にも乗れないしホテルにも泊まれない。何か事が起きたとき異国で自分を証明してくれるのはこの赤い表紙の手帳でしかない。肌身離さず携帯していないと落ち着かなかった。母国から遠く離れれば離れるほどパスポートは重みを増すに違いない。『渡り鳥日記』と題された句集の前文には「渡り鳥はふるさとをふたつ持つといふ渡り鳥の目に地球はひとつなり」と、記されている。その言葉通り作者の故郷はフランスだが、現在は長野に住み、一茶を研究している。だが、時にはしみじみと母国の匂いが懐かしくなるのかもしれない。それは古里を離れて江戸に住み「椋鳥と人に呼ばるる寒さ哉」と詠んだ一茶の憂愁とも重なる。年毎に春は過ぎ去ってゆくけれど、今年の春も終わってしまう。「逝く」の表記に過ぎ去ってしまう時間と故郷への距離の遥かさを重ねているのだろうか。「パスポート」「パリ」と軽い響きの頭韻が「春」へと繋がり、思い入れの強い言葉の意味を和らげている。句集は全句作者の手書きによるもので、付属のCDでは四季の映像と音楽に彩られた俳句が次々と展開してゆく。手作りの素朴さと最先端の技術、対極の組み合わせが魅力的だ。『渡り鳥日記』(2007)所収。(三宅やよい)




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