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July 0672008

 庶務部より経理部へゆく油虫

                           境野大波

ぜ油虫の行き先が経理部なのかと、真っ先に引っかかったのは、わたしが長年経理部で働いているからなのでしょう。庶務部と経理部に、作者がどれほどの思い入れをしてこの句を詠んだのかはわかりません。ただ、経理で日々苦労を重ねてきたものとしては、つい余計なことを考えてしまいます。経理というのは(庶務も同様ですが)仕事の性質上、どんなに完璧に業務をこなしても、営業のようにはなかなか評価してもらえません。と、愚痴はここまで。本題に戻ります。油虫というと、どうしても家の台所を考えがちですが、仕事場にも確かに出ることはあるわけです。廊下の端をすばやくはしり、部屋の中へ消えて行く様子が、目に見えるようです。句の意味はそれだけのことですが、これも確かに季節を感じる心情に違いはありません。こんな瑣末な思いを積み重ねて、日々は成り立っているわけです。ところで、仁平勝さんはこの句の解説に、次のように書いています。「いつも庶務部と経理部をウロウロして、女子社員に軽口をたたいているような男がいる。」つまりそのような男のことも、油虫の意味には含まれているというのです。気がつきませんでした。ともかく男たるもの、せめて職場で「あぶらむし」呼ばわりされぬように、気をつけましょう。『日本の四季 旬の一句』(2002・講談社)所載。(松下育男)




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