July 222008
宿題を持ちて花火の泊り客
半田順子
夏休みが始まり、平日の昼間の駅に子どもたちの姿がどっと見られるようになった。夏休みのイベントのなかでも、花火と外泊は絵日記に外すことのできない恰好の題材だ。わが家も掲句同様、わたしと弟とそれぞれの宿題を背負い、花火大会の前後を狙って祖父の家に滞在するのが夏休みの恒例行事だった。打上げ花火の夢のような絵柄が、どーんとお腹に響く迫力ある音とともに生み出されていくのを二階の窓から眺めていたことを思い出す。打上げ音が花火よりわずかに遅れて聞こえてくることの不思議に、光りと音の関係を何度聞かされても腑に落ちず、連発になると今のどーんはどの花火のどーんなのかと、見事な花火を前にだんだんと気もそぞろになっていくのは今も変わらない。そしていよいよ白い画用紙を前に、興奮さめやらぬままでかでかと原色の花火を描く。しかし花火を先に描いてしまうと、夜空の黒を塗り込むのがとても厄介になることも、毎年繰り返していた失敗だ。以前の読者アンケートに、このページを読んでいる小学生もわずかに存在するという結果が出ていたが、花火を描くときには「夜空から塗る」、これを愚かな先輩からのアドバイスとして覚えていてほしい。〈夏来ると浜の水栓掘り起す〉〈蝉穴の昏き歳月覗きをり〉『再見』(2008)所収。(土肥あき子)
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