September 262008
親芋の子芋にさとす章魚のこと
フクスケ
皿に煮物の芋と章魚が盛り付けてある。大きめの芋が親芋。小さいのが子芋。子芋が親芋に尋ねる。「なんでここに章魚がいるの?」親芋は章魚に気を使って小声で子芋に応える。「一緒にいると私たちだけでいるよりも美味しくなるからでしょ」「なんで?」「それぞれの美味しいダシが混ざってもっと美味しくなるのよ」「そうかなぁ。なんかイボイボが気持ち悪い」「そんなこというものじゃありません。失礼でしょ章魚さんに」そんなことを言いながら三者はやがて食べられてしまいました。目が点、耳がダンボ、式にちょっと可愛くちょっと戯画化した少女四コマ漫画ふうの俳句は現代のひとつの流行。自己表現という大命題のダサさをおちょくって氾濫しているが、この句ような馬鹿馬鹿しいまでのドン臭さはまた別ものの笑い。やはり流行りの気取った「可笑しみ」の俳諧とも違う。これを作るのも勇気はいるが、取った虚子もつくづく凄い。虚子編『新歳時記・増訂版』(1951)所載。(今井 聖)
『旅』や『風』などのキーワードからも検索できます
|