iB句

October 11102008

 カンガルー横座りして小鳥来る

                           永沢達明

の通勤途中に仰ぐ空が、日々高くなってきた。そしてどこからともなく降ってくる小鳥の声。それは秋日のように、次々と青空からこぼれ、花水木の小さい赤い実をゆらしている。小鳥来る、主語述語、と具体的でありながら、秋という季節の持つ明るい一面を軽やかに象徴する季節の言葉だ。そこにカンガルー。以前見た横座りしているカンガルーは、肩と肘(?)のあたりや伸びた後ろ脚が、思わずまじまじと見入ってしまうほど人間ぽく、いきなり話しかけられても普通に会話できそうだったのを思い出す。そんな、ふっと笑ってしまうようなカンガルーのはっきりとした姿と、小鳥来る、の持つきらきら感が出会って、一句に不思議なおもしろさと、自由でのびのびとした表情を与えている。明日から、小鳥の声を聞くたびに、カンガルーを思い浮かべてしまいそうな、インパクトの強い句である。『彩 円虹例句集』(2008・円虹発行所)所載。(今井肖子)




『旅』や『風』などのキーワードからも検索できます