October 182008
風葬の山脈遠く秋耕す
目貫るり子
裏作の畑に種を撒くことや、稲刈りを終えた田の土を起こすことを秋耕という。春の「耕し」に比べて、気持ちはややゆったりとして、ときおり仰ぐ空は青く高い。くっきりとした稜線を見せながら、仄かに色づきつつある山。そのまた先の見知らぬ山々と、どこまでも続く澄んだ空に、風葬、の一語が風となって渡ってゆく。空葬ともよばれる風葬は、山奥の洞窟や高い木の上、海に向かった断崖などを選んで行われたという。晒される、と考えると、その語感とはうらはらな印象もあるが、この句の風葬の山のその先には、海が広がり遙かな水平線が見える。澄んだ青空から山そして海へ、風と共に彷徨うように運ばれた視線。それを、秋耕す、の下五が、足元の大地へひきもどす。耕すことは生きることであり、遠近の対比は、生と死の対比でもあるのだろう。『彩 円虹例句集』(2008・円虹発行所)所載。(今井肖子)
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