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October 29102008

 月見酒天動説のまことかな

                           小林直司

時記に月見酒あり、月見団子あり。なるほど、お月見にも辛党と甘党があるわけだ。月見酒とか雪見酒という風流の極致と言いたい言葉は古くからあるけれど、今日、風流をたしなむ俳人はともかくとして、なかなか実行する機会は少ないのではないか。ままよ、さっぱりお月さまが見えない薄闇のなかで、ワイワイ飲んでいる。そんな風情を私は一概に否定はしたくない。コペルニクスが、太陽が宇宙の中心だと唱えた地動説以前の宇宙構造説が天動説である。宇宙科学の「まこと」はともかく、地動説よりも天動説のほうがポエティックではないか? 宇宙原理に基づいた、まっとうな地動説ばかりがまかり通るようでは、世の中はつまらないことおびただしい。「天動説のまこと」とは大胆にずばり言い切ったものである。下五が憎らしいほどに功を奏している。地動説危うしとなって、月見酒の席は気宇壮大にとほうもなく盛り上がっているにちがいない。つい最近、私が参加した句会で「鬼胡桃何がなんでも天動説」に出くわして、思わず高点を投じてしまった。地動説を信じて疑わない精神こそ厄介なのではあるまいか。「朝日新聞」2008年9月29日の「朝日俳壇」で大串章選で入選した句。(八木忠栄)




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