December 102008
極月や冬という名のデザイナー
ホーカン・ブーストロム
以前、このサイトでスウェーデン人の俳句を紹介したことがある。それと同じ日本とスウェーデン初の俳句アンソロジー『四月の雪』から掲出句を採った。原句の直訳は「十二月の今日/冬という名のデザイナーは/そのコレクションを披露する」(舩渡和音訳)。これを清水哲男が翻案した。ちなみにスウェーデンの俳句界では、季語は定められていないそうだから、ここでは「極月」と「冬」の同居に目くじらをたてる必要はあるまい。「冬という名のデザイナー」が効いている。たしかに雪や寒さだけでなく、冬の諸々をデザインする者がどこかにひそんでいるのかもしれない。やさしいデザイナー、きびしいデザイナーなど、いろんなタイプのデザイナーが季節を操っているにちがいない、と考えると愉快ではないか。冬に限らず、春の、夏の、秋の腕っこきのデザイナーももちろんいるだろう。彼が持っている折々のコレクションを次々に披露してくれる――そんなふうに季節の変化を受けとめるロマンを持てたらすばらしい。海外での俳句熱は年々盛んである。日本とスウェーデンに限らず、俳句を通して日本と他の国の人々の感性、あるいは文化のちがいや共通性を見出してゆくことの意義は大きい。同書からもう一句ご紹介しよう、「高圧線凍れる国に弦を張る」。『四月の雪』(2000)所収。(八木忠栄)
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