January 062009
膝くづし草石蚕をすこし齧りけり仲 栄司昨日から仕事始めの方も多いなか、今さら正月料理を出すのも心苦しいが、一度紹介してみたかった「草石蚕(ちょろぎ)」をぜひ。実際に目にする機会は、黒豆とともに添えられたおせちのお重のなかでしかないと思われるシソ科イヌゴマ属の多年草の根の部分である。百合根のような風味なのだが、見た目は名前の通り、蚕というかグロテスクな幼虫のかたちをしており、しかも真っ赤に染められている。初対面ではひと齧りするのもおっかなびっくりという具合であろう。掲句では膝をくずしたあたりのタイミングも絶妙。一体甘いのやら酸っぱいのやら、果ては食べてもよいものなのかということまで含み、皆目見当のつかない物体なのである。ちょろぎがおせちに紛れ込んでいる理由のひとつにその名が「長老喜」と当て字されるおめでたい食べ物ということもあり、「せっかくなのだから食べてみたら」と再三勧められたのちおそるおそる伸ばした箸なのか、それとも興味津々の我慢の末、場がなごんだのを機会に「えいっ」と伸ばした箸なのかも気になるところ。愛すべき草石蚕の画像はこちら。『ダリの時計』(2008)所収。(土肥あき子)
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