February 122009
名前からちょっとずらして布団敷く
倉本朝世
敷く布団に小学校のころ使ったノートの細長い空欄を思った。試験用紙もそうだけど、何度あの欄に名前を書き入れたことか。名前はほかでもない私の証。だけど、名前で呼ばれる私と内側に抱える自分とのずれは誰もが感じていることだろう。その名前から少しずらして敷く布団は季語としての布団じゃなくて、毎朝毎晩押入れから出し入れして敷く生活用品としての布団だろう。その布団にくるまれて眠るのは名前で呼ばれる昼間の私をはずれて夢の世界に入ること。「名前」と「布団」違う次元にあるようでどこか近いものを並べて日常に隠された違和感をするする引き出してくるのが川柳の面白さ。「煮えたぎる鍋 方法は二つある」なども、方法という言葉を置くと台所の鍋がこんなにも怖いものになるのかと、言葉の力を感じさせる句である。『なつかしい呪文』(2008)所収。(三宅やよい)
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