June 1162009

 蛍死す金平糖になりながら

                           中島砂穂

んともはや奇想天外。世に蛍の句は多けれど、蛍の死をこんな風に詠んだ句にはまずお目にかかれない。蛍の醸し出すイメージは、恋に身を焼く蛍かな、のように自らの恋心を重ねたり、死んだ人の魂を託したりと思い入れたっぷりに使われてきたように思う。死んだ蛍を詠んだ句では永田耕衣の「死蛍に照らしをかける蛍かな」があるが、凄みがあり妖気溢れる蛍の光景である。掲句では、そんな蛍の見方をうっちゃって、息絶えて地面にぽたりぽたりと落ちた蛍が金平糖になってしまう。蛍が放っていた光が金平糖の突起になって固まってしまうなんて漫画チックな展開だ。掌にこぼす色とりどりの金平糖が闇を飛び回っていた蛍だと思えば、金平糖の甘さにほろと苦い哀感が隠し味として加わりそうだ。『熱気球』(2008)所収。(三宅やよい)




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