September 172009
普段着で猫行く町の秋祭り
小西雅子
この間の日曜日犬を連れて公園へ散歩に出かけると、町は祭の最中だった。ああ、そういえば清水さんが増俳に祭りの撮影に行く予定。と書かれていたな、と思い出した。入り組んだ町の路地のあちこちには控所や休憩所らしきものが出来、お神酒や餅がふるまわれていた。髪を明るく染めた女の子が紺の法被にぴったりとした股引をつけきびきびと走り回っている。男も女も額には細く絞った日本手ぬぐいをきりりと巻いて、「いよっ、イナセだね」と声をかけたくなる雰囲気で、町全体が活気づいていた。うちの犬だけでなく、祭の町を連れられてゆく犬はきょろきょろあたりを見回して落ち着きがない。通りをゆく子供もおとなもどこか華やいだ表情をしている。猫は見かけなかったけど、人目を避けて塀沿いを伝い歩きしていたかもしれない。きっとわさわさした町にちろりと視線をくれたきり、素っ気ないようすで通り過ぎていったことだろう。秋祭に浮き立つ町でこころも身体も普段着のまま、過ごしていたのは猫と雀だったかもしれない。『雀食堂』(2009)所収。(三宅やよい)
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