mq句

November 24112009

 地下鉄に息つぎありぬ冬銀河

                           小嶋洋子

下鉄というものは新しいものほど深いという。一番最近開通した近所を走る「副都心線雑司が谷駅」など、地上から約35mとあり、その深さをビルに換算すると…。想像するだに息苦しくなる。ここまで深いと、始発駅から終点まで地上に出ることなく黙々と地下を行き来するのみだが、古株の「丸ノ内線」になると時折地上駅がある。ことに東京ドームを横目にする後楽園駅のあたりは、どこか遊園地の続きめいた気持ちにさせる区間だ。おそらく電車も地下から地上へ視界が開ける瞬間に息つぎをして、また地下へと潜っているのではないか、という掲句の気分もよく分かる。東京の地下鉄の深さを比較するのにたいへん便利な東京地下鉄深度図を見つけた。まだ副都心線が網羅されていないのが惜しいが、前述の「雑司が谷駅」付近はほとんど「永田町駅」クラスの深海ならぬ深都市層を走っていることとなる。眺めているうちに、息つぎを知らない不憫な副都心線の一台一台をつまみあげて、冬の夜空を走らせてあげたい気持ちになってきた。〈跳箱の布の手ざはり冬旱〉〈地球史の先端にゐる寒さかな〉『泡の音色』(2009)所収。(土肥あき子)




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