December 102009
魔女の目の小さくなりて蕪汁
加藤直克
オズの魔法使いに出てくる西の魔女、白雪姫に毒林檎を売りに来る意地悪なお妃、お話に出てくる魔女たちは黒いマントに身を包み、三角のとんがり頭巾の影から邪悪そうな眼を光らせて相手の様子をうかがっている。思えばステレオタイプなイメージだが、悪役がいるからこそ主役が引き立つ。魔女は大事な役回りだ。掲句は「小さくなりて」というところで魔女に対する固定的な見方を少しめくりあげてくれる。真白な蕪をあっさりとした出し汁で時間をかけて煮込み、味噌で仕立てた蕪汁。アツアツの蕪をほくほく食べながら、満足のあまり魔女が目を細めていると思えば、魔女の顔が愛敬のある表情へ一変する。そうした映像的面白さとともに、日本的「蕪汁」と西洋的「魔女」の取り合わせがミスマッチなようでバランスがよく、どこかしら滑稽な味わいを感じさせるところにこの句の魅力があるように思う。『葆光』(2009)所収。(三宅やよい)
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