December 262009
冬木立おとぎの国へ続く道
松永静子
久しぶりに聞いた言葉だと思った、おとぎの国。ちらりと「ナルニア国物語」の衣装箪笥の中の雪の森が浮かんだりもしたが、ナルニア国は、おとぎの国というにはちょっとハードすぎるかもしれない。枯木立、というと冬ざれた寂寥感が先立つけれど、冬木立、という言葉にはどこかやわらかな響きがあり、うっすら雪に覆われながら明るさの残る木々が思われる。そんな木立の中を歩きながら、冬の匂いを感じた時、ふと見知らぬ何かに見つめられているような気がしたのかもしれない。未知、に通ずる道の余韻が、今年のしめくくりにふさわしいなと思ったこの句は、「船団」第八十四号(2009)の中の、作品五十句の中にあった。公私ともに変化の大きかった今年を思いながら、この句の少し後の〈叱られて来たはずだった春の川〉の省略の効いた表現に、郷愁を感じると共に待春の思いを強くした。(今井肖子)
『旅』や『風』などのキーワードからも検索できます
|