原稿を書かねばと思いつつ、慌ただしい気分に時が過ぎてゆく。(哲




2009ソスN12ソスソス26ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

December 26122009

 冬木立おとぎの国へ続く道

                           松永静子

しぶりに聞いた言葉だと思った、おとぎの国。ちらりと「ナルニア国物語」の衣装箪笥の中の雪の森が浮かんだりもしたが、ナルニア国は、おとぎの国というにはちょっとハードすぎるかもしれない。枯木立、というと冬ざれた寂寥感が先立つけれど、冬木立、という言葉にはどこかやわらかな響きがあり、うっすら雪に覆われながら明るさの残る木々が思われる。そんな木立の中を歩きながら、冬の匂いを感じた時、ふと見知らぬ何かに見つめられているような気がしたのかもしれない。未知、に通ずる道の余韻が、今年のしめくくりにふさわしいなと思ったこの句は、「船団」第八十四号(2009)の中の、作品五十句の中にあった。公私ともに変化の大きかった今年を思いながら、この句の少し後の〈叱られて来たはずだった春の川〉の省略の効いた表現に、郷愁を感じると共に待春の思いを強くした。(今井肖子)


December 25122009

 点滴の滴々新年おめでたう

                           川崎展宏

宏さんが亡くなられた。僕は同じ加藤楸邨門下だったので、展宏さんに関する思い出はたくさんあるが、その中のひとつ。展宏さんが楸邨宅を訪ねた折、展宏さんが「僕はどうせ孫弟子ですから」と楸邨の前で少しいじけて見せた。展宏さんは森澄雄の薫陶を受け「杉」誌創刊以来中核の存在であったため、そのことを意識しての言葉だった。それに対し楸邨は「そんなことはありません。直弟子です」と笑って応じたという。酒豪の展宏さんは酔うと必ずこの話をされた。そういえば楸邨に川崎展宏君という前書のある句で「洋梨はうまし芯までありがたう」がある。「おめでたう」と「ありがたう」は呼応している。晩年の病床でのこの句の余裕と呼吸。やはり展宏さんはまぎれもない楸邨の直弟子であった。「角川俳句年鑑」(2009)所載。(今井 聖)


December 24122009

 雪が来るコントラバスに君はなれ

                           坪内稔典

ントラバスはチェロよりも大きく、ジャズの演奏にはベースとして登場する。低音の暖かい音色が魅力の楽器である。チェロよりはややロマンチックでないかもしれないが、ボンボンと響くその音が楽曲の全体をおおらかにひき締める大切な役柄を担っている。真っ黒な雪催いの空が西から近づいてきて、今夜は吹雪くかもしれない。その時は僕がしっかり両腕で受けとめてあげるから君はコントラバスになりなさい。やさしい言葉だけどしっかりした命令形が頼もしい。これは最高に素敵な求愛の言葉。二人だけの夜にこんな言葉をささやかれたら女性はすぐに頷いてしまうだろう。世の男性たちも自分の心持ちをお洒落に表現する言葉の使い手になってひそかに思いを寄せる女性たちを口説いてほしい。今夜はクリスマスイブ、雪と求愛が一年で一番似合う夜が訪れる。『水のかたまり』(2009)所収。(三宅やよい)




『旅』や『風』などのキーワードからも検索できます