年々松の内の晴れ着姿が減少。すっかり成人の日に移行した感じです。(哲




2010蟷エ1譛5譌・縺ョ句(前日までの二句を含む)

January 0512010

 セーターに猫の毛付けしまま帰す

                           西澤みず季

謡にある通り、猫は寒がりであるから、冬ともなれば人間の膝の上だろうが、うっかり脱ぎ捨てた洋服の中だろうがお構いなしに、より暖かい場所を探し求める。というわけで猫を飼っていると、どんなに注意していてもどこかしらに猫の毛が付いているものである。電車のなかで居眠りした友人がはっと目をさましたとき「隣の人がなにしてたと思う?」と言う。愛らしい女性がもたれかかってきたのだから喜んでいたのかと思いきや、「すごく嫌そうに、わたしのコートから移動した猫の毛を一本一本取ってたの」だそうだ。猫の毛は細くてなかなか取りにくい。だからこそ、家庭内に不穏な騒動を持ち込む原因にもなりかねない。掲句の女心がちょっぴりのいたずらなのか、はたまた浮気な男へのきつい一撃なのか、どちらにしてもその後が気になる一句である。猫を飼っている人としか付き合わないから大丈夫、などとゆめゆめ油断めされるな。かの友人は「うちの猫の毛じゃない」ということもすぐに分かると言っていた。〈雪渓を見上ぐる鳥の顔をして〉〈極月の万の携帯万の飢餓〉『ミステリーツアー』(2009)所収。(土肥あき子)


January 0412010

 獅子頭ぬぎてはにかむ美青年

                           片山澄子

子舞の句には、獅子頭をぬいだときのものが結構ある。舞そのものを詠んだ句は非常に少ない。つまり獅子舞は鑑賞する芸ではないのかもしれない。しかし皮肉なことに、舞う人の多くはそう思ってはいない。だから「はにかむ」のだ。学生時代の終りごろに、よく京都・千本中立売の安酒場に出入りした。このあたりは、かつては水上勉の『五番町夕霧楼』でも知られる西陣界隈の大きな色町・盛り場だった。私が通ったのは売春禁止法が施行された少しあとだったので、街は衰退期に入っていたのだけれど、それでもまだ色濃く名残りは残っていて、行く度にドキドキするような雰囲気があった。獅子舞の青年と知りあったのは、そんな安酒場の一つだった。句にあるような美青年ではなかったけれど、この時期になると獅子頭を抱えて街を流していて、ときどき一服するために店に入ってくるのだった。カウンターの奥にそっと商売道具を置き、コップ酒をあおる彼の姿は、それこそドキドキするほど格好が良かった。いつしか口をきくようになり、ほとんど同じ年頃だったが、彼の全国放浪の話を聞くにつけ「大人だなあ」と感心することばかり。句の青年は由緒正しい獅子舞の伝統を踏まえた芸人の卵であることがうかがわれ、微笑ましい限りだけれど、彼のほうは芸人というよりもチンピラヤクザに近かったのであって、芸もへったくれもなかったのではなかろうか。でも、そんな裏街道を行く彼の生き方に共感を覚え、彼が好きだったのは、あながち若年のゆえだけとは言えない何かがあったからだと思う。その後の私が社会人としてのまっとうな職業を外れた背景には、彼に象徴される裏通り特有の人生観にも影響されたところがあったような気がする。もうすっかり名前も忘れてしまったけれど、彼のほうはその後どう生きただろうか。新年早々掲句を読んで、そんなことをほろ苦く思い出したのだった。最近は、飲み屋街で獅子舞を見かけることもなくなった。もう商売としては時代遅れなのだ。往時茫々である。『未来図歳時記』(2009)所載。(清水哲男)


January 0312010

 只の年またくるそれでよかりけり

                           星野麥丘人

あ、読んでの通りの句です。言っていることも、あるいは言わんとしていることも、実にわかりやすくできています。ありふれていることのありがたみを、あらためて、しみじみと感じている様子がよく表されています。正月3日。このところの深酒のせいで深く眠ったあとで、ゆっくりと目が覚めて、朝風呂にでも浸かっているのでしょうか。水面から立ち上る湯気の様子を、見るともなく見ながら、年が改まったことへの感慨を深めているようです。若い頃には、受験だ結婚だ出産だと、次から次へ予定が詰まっていた一年も、子供たちが独立してからは、年が新しくなったからといって、特に大きな予定も思い当たらなくなってきました。ただただ時の柔らかな流れのなかに、力をいれずに身をまかせているだけです。なんだが止め処もなく湧いてくる、この湯気のような月日だなと思いながら、ありふれた日々のありがたさに、肩深くまで浸かっています。よいことなんて特段起きなくていい。生きて何事もなくすごせることの奇跡を、じかに感じていたいのです。『新日本大歳時記』(2000・講談社)所載。(松下育男)




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