ソスヘ厄ソスソスソスソスソス句

March 1332010

 大川のうたかたはじけ蝶となる

                           河野美奇

、ちょっと散歩に出たら蝶に行き会った。久々の日差しにつられて出かけた者同士、といった出会い方で。すれ違ったというのもおかしいけれど、なんだまだけっこう寒いじゃないの、とでも言いたげに、揺れながら飛んでいってしまった。この句の作者は、隅田川の川縁で蝶と出会ったのだろう。水面のきらきらと蝶のひらひら、まだ少し冷たさの残る川風に吹かれている。蝶が去ってしまってから、この水面のきらきらの中から蝶が生まれたような気がしてくる。そんな気がする、そんな心地、それを言いたいのだけれどなかなか言えない、私などはよくあることだ。しかし作者はきっと静かに、蝶に思いをめぐらせながら、川面を見つめていたに違いない。ほんとうに泡が見えたのか、光がはじけたのか、その一瞬を逃すことなく、うたかたはじけ蝶となる。観る、待つ、逃さない、できそうでなかなかできない。『人のこころに』(2010)所収。(今井肖子)




『旅』や『風』などのキーワードからも検索できます