May 012010
定年はやがてくるもの花みづき
日下部宵三
今日から五月、夏近し。とはいえ、どうもすっきりしない春だった、とぶつぶつ言っているうちに、花みづきが満開の通勤路である。花みづきは、歳時記では夏季だったり春季だったり。確かにあの眩しい白は、街を一気に初夏の景色にするけれど、春から夏へ、空の色も少しづつ変わってくる今頃の花だ。学校は当然の事ながら、皆等しく三月に定年退職となる。五十代も後半に突入して、その時がぐっと近づいてきた心地のこの頃だが、自由の身となった開放感を一ヶ月ほど味わったあと、満開の花みづきの白さに何を思うだろう。などと思いながら、やがて、を広辞苑で調べると、「本来は、間に介在するもののないさまをいう。」とあり、「すぐさま。ただちに。」が1.の意味になっている。2.の意味として、「まもなく。ほどなく。今に。」などあるが、それでも思っていたより、間近な印象だ。北米原産というこの花の、見ようによってはあっけらかんとした明るさに、急かされるような励まされるような不思議な気分になるのだった。『花の大歳時記』(1990・角川書店)所載。(今井肖子)
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