蝓主牙翠驥弱ョ句

July 2072010

 水桶に女の屈む朝曇

                           城倉吉野

日土用の入り。いよいよ日本のもっとも厳しい時節に足を踏み入れたわけだが、エアコンも扇風機もない時代から繰り返し乗り越えてきていることを思えば、暑いのは夏の取り柄なのだとわずかに開き直る心持ちにもなる。「朝曇(あさぐもり)」とは、「日照りの朝曇り」という言葉があるように、明け方どんよりと曇っていても、日中は辟易するような炎天になることをいう。高気圧に覆われていると風が弱いため、夜間は上層より下層の空気が冷え、雲ができやすくなっていて、いっとき朝方は曇っているが、日射により雲はみるみる消えてしまう、というれっきとした気象現象である。しくみはどうあれ、「ともかく今日は暑くなる」という体験による確信が伝わる季語であることから、掲句の屈む女の姿が際立つ。水桶に張った水面に映るどんよりと濁る曇天に、女のこれからの労働と、その背景に容赦なく照りつける太陽がもれなくついてまわる一日を思わずにいられない。日本人の生活感覚として確立された季語の、まさに本領発揮という一句である。〈千人の僧のごとくに夕立かな〉〈天の川ひとは小さな息をして〉『風の形』(2010)所収。(土肥あき子)




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