August 162010
還暦の子がパソコンの夏期講座
有保喜久子
高齢化社会を象徴しているような句だ。親の還暦を詠んだ句ならいくらでもありそうだが、子の還暦を題材にした句にははじめて出会った。考えてみれば、いまの女性の平均寿命は九十歳に近いのだから、こういう句があっても不思議ではない理屈だ。他ならぬ私の母も九十二歳なので、子供の還暦どころか古稀にも立ち会ったことになる。そのうちに、親が子供の還暦や古稀を祝うことすら普通になってくるのかもしれない。昔からよく言われてきたことだが、いくつになっても子供は子供……。この句には、そんな親の気持ちが前面に出ている。子供が小さかった頃に夏期講習会に出かけていくのを見守ったまなざしが、六十歳になった子供にもそっくりそのまま向けられていて微笑ましい。いくつになっても、子供の向上心は親には健気と写り、また頼もしく思えるのである。『未来図歳時記』(2009)所載。(清水哲男)
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