October 092010
校庭のカリン泥棒にげてゆく
久留島梓
大きくて香りの高いカリン(榠と木偏に虎頭に且)だけれど、生の実は固く渋い。薬にもなるというが、食べようと思えば、果実酒にしたり砂糖漬けにしたりと手間がかかる。そんなカリンの実、たわわに実ったうちのいくつかをもいで持っていったところでさして咎められることもなかろうに、泥棒という言葉が与えるスタコラサッサ感が、カリンのやたらにいびつな形と共にユーモラスだ。待て〜と追いかけることもなく、その後ろ姿を作者と共に見送りながら、思いきり伸びをして青空に向かって両腕を突き出したくなる。「教師生活三年目をなんとか終え」とある作者の二十句をしめくくっている一句は〈テストなど忘れてしまえ春近し〉上智句会句集「すはゑ(漢字で木偏に若)」(2010年第8号)所載。(今井肖子)
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