October 232010
やゝ寒く人に心を読まれたる
山内山彦
やや寒、うそ寒。いずれも晩秋の寒さなのでふるえるほどではないのだが、うそ寒の方が心情が濃い気がする。だからこそ、心を読まれたと感じた時の不意打ちにあったようなかすかなたじろぎと、やゝ寒という、あ、ひんやりという感じを心情をこめずに言っている言葉が呼び合うのだろう。これがうそ寒であったら、心持ちそのものがどこかうすら寒いということで、あたりまえな話になってしまいそうだ。思ったことがすぐ顔や態度に出るわかりやすいタイプは他人の心の中はあまりよくわからず、逆にいつも飄々として何を考えているかわからない人ほど、相手の考えていることを読めたりする。作者はきっと後者なのだろう。『春暉』(1997)所収。(今井肖子)
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