今年もあと四十日。追いつめられてもいないが習性的に焦る気が。(哲




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November 22112010

 オリオンや眼鏡のそばに人眠る

                           山口優夢

リオンは冬になると際立つ星座だから、季語「冬の星」に分類する。何の変哲もない情景を詠んでいるのだが、構図の取り方の巧みさが、情景に深い感情を添えている。単に枕元あたりに眼鏡を置いて眠っている人の様子なのだが、掲句では眼鏡をクローズアップすることによって、寝ている人がいかにも小さく思われるし、そのちっぽけな存在が天空のオリオン座に照らしてますます小さく見えてくる。そして、この存在の小ささが、この人へのいとおしさを呼び覚まし、ひいては人間存在一般へのそれを思わせてくれる。三好達治の二行詩「雪」(太郎をねむらせ、太郎の屋根に雪ふりつむ……)に通じる世界と言ってよかろうが、三好よりも構図にひねりを効かせたところが作者の発見であり、その才能の並みでないところでもあるだろう。構図取りにあまり凝りすぎるとあざとくなりがちなものだけれど、それを少しも感じさせないさりげない詠み方に好感を持った。「週刊俳句」(2010年11月21日付)所載。(清水哲男)


November 21112010

 柔道着で歩む四五人神田に冬

                           草間時彦

とさら作者のことを調べなくても、句を読んでいれば、草間さんはサラリーマンをしていたのだろうなということが想像されます。俳人にしろ、詩人にしろ、作品からその人のことが思い浮かべられる場合と、そうでない場合があります。つまり、作品を人生に添わせている人と、引き離している人の2種類。もちろんどちらがいいとか悪いとかの問題ではなく、でも、僕は年をとってくるにつれ、前者の作品に心が動かされる場合が多くなってきたように感じます。本日の句は、まさに俳句でしか作品になりえない内容になっています。神田という地名から、やはり柔道着を着ているのは大学生なのかなと、感じます。ランニング練習のあとで、ほっとして校舎にもどる途中ででもあるのでしょうか。四五人分の汗のにおいと呼吸の白い色が、すぐそばに感じられる、そんな句になっています。『合本 俳句歳時記 第三版』(2006・角川書店)所載。(松下育男)


November 20112010

 バス発てば君居なくなる寒くなる

                           辻田二章

は寒くても気持ちはあたたかい時もあればその逆もある。この句が生まれたのは、小春の休日だろうか。一緒に過ごしている間は、まさに賜った今日の日差しが何倍にも輝きを増して二人を包み、身も心もほわっとしているけれど、楽しい時間はあっという間に過ぎてしまう。小さな今日だけの別れでも別れはさびしいものであり、それは会った時から、さらに会う前からわかっていたこと。バスが発ってしまって君がいなくなってだからさびしい、のではない。バスを見送りながら、わかっていたさびしさを今さらのようにかみしめていると、いつのまにか日は暮れていてさっきまで感じなかった寒さに急に襲われたのだろう。そして、今日一日の幸せな時間を思い出して、心にぬくもりを感じつつ家路をたどる作者である。『枇杷の花』(2001)所収。(今井肖子)




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