|ン江句

December 11122010

 誰の手もそれて綿虫まどかなれ

                           大竹きみ江

綿虫、大綿、雪虫。あんなに小さいのにどうして大綿なのだろう、と思ったら、トドノネオオワタムシというのが正式な名称とのこと。その存在を、名前と共に認識したのは私の場合は俳句を始めてからだ。初めて、あ、これが綿虫か、とはっきり認識した時、自然と手が出たのを思い出す。特に捕まえようとしたわけでもなかったけれど、ふっと手が出てしまったのだった。きっとちょっと指があたっただけでも、綿虫にとっては大きい衝撃に違いない。綿虫が指をすり抜ける、というような見方はありがちだけれど、それて、と、まどかなれ、に願いのこもった慈しみが感じられる。知人が、飛んできた蚊をたたいたら小学一年生のお嬢さんに、蚊にも命があるんだよ、と言われてはっとしてしまった、と言っていたのを思い出した。まだまだ読みきれない『アサヒグラフ 女流俳句の世界』(1986年7月増刊号)所載。(今井肖子)




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