December 162010
ふるさとの母には猫のお取り巻き
内田真理子
季節を表す言葉はないが、陽のあたる縁側に何匹もの猫に取り囲まれているおばあさんの姿が思い浮かぶ。家族は遠い町へ出て行ってしまって一人でくらしているけれど、畑で採れた白菜を干したり、枯葉を掃いて焚火をしたりしているとうちの猫やら近所の猫やらが足元にすりよってくる。そんな猫たちはふるさとの母親になくてはならないお友達であり、家族なのだろう。「取り巻き」と言えば力のある人にコバンザメのようにすりよってゴマをする、あまりいい意味にはつかわれない。だけどそれが猫で、しかも「お」を付けたもったいぶった言い方が猫たちと母のほのぼのとした関係を想像させる。作者は柳人。「ともだちになれると思うなつめの木」「歳月を馬に曳かせて油売り」『ゆくりなく』(2010)所収。(三宅やよい)
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