February 132011
かうしては居れぬ気もする春炬燵
水田信子
マンションに住み始めてからは、こたつとは縁のない生活をしてきました。私が実家でこたつに入ったのは、もうだいぶ昔のことです。昔のこたつだから、なかなかうまい具合に温度調節ができず、脛が熱くなりすぎたり、あるいはなかなか温かくならずに肩まで潜ったことなどを覚えています。それでもいったん入ったら、なかなか抜け出ることができません。だんだんだらしなくなってきて、ああこれではいけない、もっとしゃっきりとしなきゃあと、後ろめたい心を抱えながらもずるずると時を過ごしてしまう。いったん入ってしまうと、どうしてあんなに動けなくなってしまうのだろう。大げさではありますが、どこか、自分の意志の弱さを試されているような気分にもなります。それでも時折、こたつに入ってみたくなります。あの心地の良さと、ずるずるとだめになってゆく自分を、感じるために。『角川俳句大歳時記 春』(2006・角川書店)所載。(松下育男)
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