March 022011
カレンダーめくれば春がこんにちは
坂上芽衣子
弥生三月。さすがに寒さもゆるんで来た。寒さということで言うと、一月のカレンダーも二月のカレンダーも寒々しくて恨めしい。早々にやり過ごしたい。二月のカレンダーをめくって三月になると、誰しもホッとして心も表情もやわらいでくるだろう。どんなに豪雪の冬がつづいても、雪国にもちゃんと春はやってくる。厳しかった酷寒もやがて去って、南から北まで隈なく暖かい春が広がる。掲句は、雪国新潟の新聞による「2010年ジュニア文芸大賞」の俳句部門で大賞を受賞した俳句であり、作者は現在中学三年生。受賞の言葉の冒頭にはこうある。「2年生の時につくりました。3月を迎えて、早く3年生になって楽しいことをやりたいなあ、いっそ3月のカレンダーもめくっちゃおうかなという思いを素直に出せたと思います」。その気持ちはよくわかる。三月のカレンダーをめくって、四月になれば上級生。雪に閉じこめられていた中学生が、春を待ちわび、同時に上級生になることへの期待を、率直にこの一句にこめている。春が「やってくる」ではなく、「こんにちは」という表現にいきいきとした若さが感じられる。芽衣子さん、楽しい三年生を過ごせたかしら? 同賞の佳作には、小学六年生の「山の中かくれんぼするきのこたち」(中川果琳)という可愛い句もある。「新潟日報」(2011年2月5日)所載。(八木忠栄)
『旅』や『風』などのキーワードからも検索できます
|