March 142011
たんぽぽや避難テントに靴そろえ
渡辺夏紀
連作「地震百句」のうち。この句は阪神淡路大震災のとき(1995)のものだ。だいぶ以前に「きっこのブログ」で紹介されていたのを覚えていた(むろん、表記などはいま再確認した)。かつての空襲の焼け跡でもそうだったように、まだ片づいていない瓦礫の隙間から生えて咲く「たんぽぽ」は、つくづく強い花だと感心する。一見可憐とも思える花が、まことに強靭な生命力を持っているのことに勇気づけられもする。そんな花の傍らに、テントに避難している人の靴がきちんと揃えられていた。テントのなかの人の様子などはわからないけれど、どんなときにも礼節を忘れない靴の主の人柄がじわりと伝わってくる。うっかり見過ごしてしまうような小さな情景でしかないけれど、作者のおかれていたシチュエーションを想像すると、逆にこのような情景こそが大きく目に入ってくるのかもしれない。いや、きっとそうなのだと思う。この春の東北のたんぽぽはまだ咲いていないだろうが、もうしばらくすると、花も咲けば鳥も歌い出す。被災地のみなさんの、せめてもの慰めになってくれればと祈っている。百句すべてを読みたい方は、こちらからどうぞ。http://kikko.cocolog-nifty.com/kikko/2007/01/post_b0f9.html(清水哲男)
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