March 272011
つまづきて春の気球の着地せり
福地真紀
この句を読んだあと、ああなるほどとうなずいてしまいました。気球が上空から下りてくる姿は、優雅で美しいけれども、いざ地面に着くときには、大地に無様にぶつかって、幾度か跳ね返りもするのでしょう。本当に着地をするところは、それほど見たことはありませんが、様子は容易に想像できます。その姿を人のように、「つまづいている」と見たところに、この句の発見があるのでしょう。気球という言葉が、遠くまでの青空をはるかに想像させてくれますし、つまづいた足元に、柔らかな緑の息吹を感じさせてもくれます。思いの空に、プカリプカリと気球を浮かばせていられるような一日を、生涯に幾日くらいもてれば、幸せな人生だったと言えるのでしょうか。『新日本大歳時記 春』(2000・講談社)所載。(松下育男)
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