April 172011
春めくを図形で言へば楕円かな
平川 尭
街中を歩いていると、見ているだけで胸の奥まですっと気持ち良くなる形があります。かというと、どうもおさまりがつかなくて落ち着かない形もあります。目の前にそびえているビルの形だったり、遠くに浮かんでいる雲の形だったり、レストランの看板の形だったり、何の理由もないのに、なぜか心に影響を与える形が、たしかにあります。でもそれは、単に「ちょっと気になる」というだけのものです。でも、そのちょっと気になるものに、一日中心がとらわれてしまうことだって、あるわけです。今日の句、春めくを楕円と感じるのは、個人的な感覚と言うよりも、だれでもが持つ共通の感じ方なのかもしれません。楕円の、長い方のひろがりに、ホッとしたものが入っていると感じられるからです。『新日本大歳時記 春』(2000・講談社)所載。(松下育男)
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