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May 0152011

 平凡といふあたたかき一日かな

                           東野佐惠子

ちろん平凡な毎日が、ただのんきで、何の気苦労もないものだなんてことはあるはずがありません。そんな人も、まれにいないことはないのでしょうが、たいていの人にとっての平凡な一日というのは、たくさんの辛いことや、みじめな思いに満たされています。それでもなんとかその日を踏みとどまって、いつもの家に帰り着き、一瞬のホッとした時間を持てるだけなのです。でも、その辛い毎日が失われた時には、ああ、あの頃はよかったなと思いだすのだから、不思議なものです。子どもがまだ小さくて、忙しく面倒を見ていた時には、幸せだなんて思う暇もなかったのに、年をとってそのころを思い出すと、ずいぶんあたたかな毎日として受け止められてきます。ということは、うじうじと思い悩んでいるこの時だって、のちに思い出せば平凡というあたたかな布に、柔らかく包みこまれていることになるのでしょうか。「朝日俳壇」(「朝日新聞」2011年4月24日付)所載。(松下育男)




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