May 162011
あいつとは先生のこと青き梅
林 宣子
少女期の思い出だろう。禁断の実というのはオーバーだが、青い梅は腹痛を引き起こすことがあるので、たいていの子は親から食べることを禁じられていた。だが、そう言われればなおさら食べたくなるのが子供というもの。これから実ってくる木苺などに比べれば、およそ美味とは遠かったけれど、よく口にした。学校からの帰り道、幼かった作者は友だちとその青い梅を噛りながら道草をしている。いっぱしの悪ガキを気取って、先生のうわさ話や悪口に興じているのだ。先生を「あいつ」呼ばわりできるのも、こんなときくらいである。振り返れば、なんと未熟なおのれだったろうと、恥ずかしくもなってくる。と同時に、何も知らなかったあの頃のこと、いっしょに学校に通った仲良したちのことが懐かしい。一生のうちで、あの頃がいちばん良かったような気もしてくる。今年も、庭の梅がたくさんの実をつけた。みんな、どうしてるかなあ、先生もお元気でおられるだろうか。『現代俳句歳時記・夏』(2004・学習研究社)所載。(清水哲男)
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