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June 2862011

 明易し絵具の棚の青の段

                           天野小石

近なところでmacのカラーインデックスを開いてみた。パレットのクレヨンは48色が配され、青とおぼしき種類だけでも7種類が並ぶ。薄い方からスカイ、アイス、アクア、ターコイズ、ブルーベリー、オーシャン、ミッドナイト、こうして文字にするだけでも涼やかな風が運ばれてくるようだ。日本の伝統色の青みに至っては、瓶覗(かめのぞき)やら紅掛空色(べにかけそらいろ)など、涼感というより、その名の生い立ちに深く興味を覚える。おそらく作者も、青系の絵具の並ぶ棚を眺め、そのグラデーションの美しさに目を奪われたのはもちろん、それぞれに付いたゆかしい名の由来に思いを馳せつつ、仄とした明易(あけやす)の時間に身を置いているのだろう。暁から薄明、東雲、曙と深い闇から明るい瑠璃色へと移り変わる夜明けもまた、空の青の段を楽しめる時間である。『花源』(2011)所収。(土肥あき子)


September 1092011

 同じ月見てゐる亀と兎かな

                           天野小石

曜日の夜の月は、兎の耳だけをのぞかせていよいよふっくらとして来た十日の月だった。この句の月は仲秋のくっきりとした名月、今年は十二日の月曜日が十五夜で満月でもある。四季折々友人と、いい月が出ています、というメールをやりとりすることがある。それが今別れたばかりの人でも、しばらく会っていない人でも、同じ月を見ているという、その時のほんのりとした距離感は変わらない。ウサギとカメ、といえば寓話の世界では手堅く努力したカメが隙だらけのウサギに勝つわけだが、そんなウサギは月でちゃっかり餅など搗いている。亀と兎の絶妙の組み合わせが、同じ月を見ている時の距離感と感覚を思わせ、誰も彼も月をただただ見てしまうのだ。『花源』(2011)所収。(今井肖子)


April 0842014

 狛犬の尾の渦巻けり飛花落花

                           天野小石

社の参道に入ると両脇に置かれる狛犬の起源は、エジプトやインドの獅子が中国を経て伝来したとされる。仁王像同様、二体は阿吽のかたちを取り、筋骨隆々、痩せ形、巻き毛と姿態も大きさもさまざまである。掲句の狛犬は尾にも渦を持つタイプ。渦巻きは燃え立つ炎を思わせ、全身に立体感があり、雄々しいタイプの狛犬だ。そのいかめしい狛犬に桜が降りしきる。一斉に咲く桜は満開の日から飛花落花が始まる。風雨にさらされ通しの狛犬も、一年のうちのほんの数日は、こうして花にまみれることもあるかと思うと、ふと安らかな思いにもとらわれる。体中に桜の花びらをまとわりつかせた様子は、唐獅子牡丹ならぬ、狛犬桜とでもいうような豪奢な景色だろう。桜吹雪がやわらかく触れるなかで、歯を見せる狛犬がなんとなく笑っているようにも見えてくる。『花源』(2011)所収。(土肥あき子)




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